男の料理|「干し椎茸」のうま味成分を最大限に引き出す戻し方と戻し汁の使い方

料理を美味しくする「うま味」には、「グルタミン酸」「イノシン酸」「グアニル酸」があり、これらを合わせて「三大うま味成分」と呼ばれています。

「グアニル酸」を含む食材は限られていて、乾燥したキノコ類やドライトマト、海苔などに含まれています。なかでも「干し椎茸」の含有量は他の食材に比べても群を抜いて多く、「干し椎茸=グアニル酸」ともいえる代表格です。

【グアニル酸を多く含む食材(mg/100g)】

食 材 グアニル酸
干し椎茸 150
えのきだけ 50(加熱時)
海苔 3~80
ドライトマト 10

※引用元:NPO法人うまみインフォメーションセンター

干し椎茸からグアニル酸を引き出す方法

グアニル酸は、干し椎茸を調理する過程で増加するもので、調理前の干し椎茸にはあまり多く含まれていません。そして、グアニル酸をうまく引き出すには干し椎茸を冷水で戻し加熱する必要があります。

Dried shiitake mushrooms

干し椎茸は冷水で戻す

  1. 水で2~3度洗う
  2. 5℃くらいの冷水につけて冷蔵庫で一晩寝かす
  3. 寝かす時間の目安
    香信(こうしん):5時間
    冬菇(どんこ)、香菇(こうこ):10時間

解説(干し椎茸を冷水で戻す理由)

干し椎茸を水で戻す過程で、グアニル酸の素になる「リボ核酸(RNA)」が椎茸と戻し汁に溶け出します。そして、抽出量がもっとも増える水温は5℃付近なので、冷蔵庫で寝かします。(※一般的に冷蔵庫の室温は2~6℃)

※ 常温で長時間戻すと苦味のある疎水性アミノ酸の割合が増えるので好ましくない。

【干し椎茸の種類】

  • 冬菇(どんこ)
    カサが7分開きになる前に採取したもので、肉厚でカサの縁が内側に巻き込み丸みを帯びた形をしています。カサが白く割れているものは「花冬菇」と呼ばれ最上級品です。
  • 香信(こうしん)
    カサが7分開きになってから採取したもので、肉が薄く、カサの巻き込みが浅く平たい形をしています。
  • 香菇(こうこ)
    冬菇よりも肉厚で大型で、冬菇と香信の中間のような形をしています。

椎茸の調理は温度と時間

グアニル酸を作り出すには調理温度と抽出する時間が大切で、焼く・煮るなどの調理方法が変わっても基本的に同じです。

  1. 初めは強火で一気に加熱して、調理温度(椎茸)を60℃以上に上げます。
  2. 調理温度が80℃くらいになったら、弱火にして20分程度60~80℃を維持します。

解説(調理温度を60~80℃に維持する理由)

干し椎茸を戻す際に増えた「リボ核酸」は60~80℃で20分程度加熱すると「リボ核酸分解酵素」が働き「グアニル酸」に変化します。また、80℃以上になると「リボ核酸分解酵素」が失活してしまいます。

解説(一気に過熱する理由)

調理温度が45~60℃の温度帯では、「ヌクレオチド分解酵素」が「グアニル酸」を「グアノシン」に変化させてしまうので、一気に温度を上げてこの温度帯を通過させます。なお、温めなおす場合も同じで45℃以下で調理、もしくは60℃以上まで一気に温めなければなりません。

戻し汁は「だし」に使う

干し椎茸の戻し汁にも「グアニル酸」の素となる「リボ核酸」など戻した椎茸と同じうま味成分を作り出すものが溶け出しています。そして、椎茸の調理と同じで一定時間加熱しないと「グアニル酸」は作られません。

  1. 初めは強火で一気に加熱して、戻し汁を60℃以上に上げます。
  2. 戻し汁が80℃(沸騰直前)くらいになったら、弱火にして20分程度60~80℃を維持します。

以上で戻し汁にも「グアニル酸」が増えます。そのまま料理の「だし」として使う場合は45~60℃の温度帯にならないように調理しましょう。また、直ぐに使わない場合は、冷蔵または冷凍保存することもできます。

冷蔵庫(冷凍・冷蔵)に保存する際、温度を下げる必要がありますが、この場合も45~60℃の温度帯を避けるため、密封容器にいれて氷水に浸けるなど一気に温度を下げるようにしましょう。

Shiitake mushroom guanylic acid

戻し汁の保存方法と日持ち

戻し汁の保存期間は、冷蔵の場合で5~7日ほど、冷凍でも1ヶ月を目安にして下さい。

保存容器は蓋つきのタッパーやチャック付の保冷容器など、自分の使い勝手に良いもので問題ありません。冷凍保存の際のお勧めは、製氷機で凍らせた後に袋やタッパーに移し替えておくと大変便利です。

Refrigerated-frozen storage

Storage container

グアニル酸とグルタミン酸・イノシン酸の相乗効果

グアニル酸を単独で使用するよりグルタミン酸やイノシン酸を含む食材と組み合わせて使った方が相乗効果で美味しさが倍増します。

  • 椎茸昆布:昆布のグルタミン酸×椎茸のグアニル酸
  • おからの炊いたん(卯の花):大豆のグルタミン酸×椎茸のグアニル酸×かつおだしのイノシン酸
  • 巻きずし:かんぴょうのグルタミン酸×椎茸のグアニル酸×刺身類のイノシン酸

上記のように料理は、三大うま味成分を組み合わせているものがほとんどです。これは、世界的見ても同じで多くは「グルタミン酸×イノシン酸」「グルタミン酸×グアニル酸」で出来ています。

日本人なら毎日食べている「みそ汁」も昆布のグルタミン酸にかつお節のイノシン酸の組み合わせです。そして、「みそ汁」に戻し汁のグアニル酸を少し加えるだけでも味が大きく変わるので、試してみて下さい。

まとめ

デリケートな「グアニル酸」を「干し椎茸」から作るには温度と時間が大切です。少し難しい話になりましたが、ポイントは5℃程度の冷水で戻し、60~80℃で20程度の加熱と、45~60℃の温度はできるだけ避けることです。

  • 干し椎茸は5℃程度の冷水に5時間~10時間浸けて戻す
  • 調理温度は一気に温度を上げて45~60℃の温度帯を出来るだけ短くする
  • 調理温度は60~80℃を20分程度加熱する
  • 「だし」に使う戻し汁も60~80℃で20分程度加熱して「グアニル酸」を増やす。この際、45~60℃の温度帯を出来るだけ短くする。
  • 戻し汁の保存期間は、冷蔵で5~7日、冷凍で1ヶ月が目安。製氷機で小さなキューブ状にして保存するのが使い勝手が良い

うま味成分を上手に活用して、料理に深みが出せるようにしていきたいですね!

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