京都祇園名物「壹錢洋食」の歴史と現在

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みなさん「壱銭洋食」という食べ物を知っていますか?
今回は、京都を代表する繁華街「祇園(四条縄手)」にある「壱銭洋食」を紹介します。
ここは、大正・昭和を模した店舗で、大変おいしい「ネギ焼き?」のような食べ物が味わえるところです。
関東の方からすると「お台場ハイカラ横丁」にあるようなお店といったところでしょうか?facade

「壹錢洋食」というのは「一銭洋食」の「一」を「壹」とした店名で、どちらも「いっせんようしょく」と読みます。取り扱っている食べ物は、もちろん「一銭洋食」ですが、同店では「壹銭洋食」として販売しています。

そもそも「一銭洋食」は、小麦粉で作ったクレープのような食べ物で、1枚1銭で売られていたことから、その名が付いたといわれています。

これを現代風にアレンジしたのが同店の「壹銭洋食」で、「京都風ネギ焼き」だといえるでしょう。

それでは「壹銭洋食」の歴史から順に紹介していきますね!

大正・昭和を再現した「壹錢洋食」のお店

「壹銭洋食」は、もともと祇園新橋を流れる白川の北側に店舗を構えていたのですが、おおよそ30年程前に四条縄手に移転し、現在のような店になったと記憶しています。

祇園新橋一帯は、伝統的建築物保存地区に指定されているため、当時の店舗の外観は今ほど派手ではなく「京風町屋」に「壹銭洋食」と書かれた赤い提灯がぶら下げてあるだけの素朴なお店でした。

当時の店内は質素でしたが、「女給さん」のマネキン人形と、壁や柱に貼られた千社札(せんじゃふだ)花名刺(はなめいし)が昭和初期の時代を連想させる雰囲気になっていました。

当時のお店を写真で紹介できないのは残念ですが、「壹銭洋食」のお店があった「祇園新橋」は以下のようなところです。

Gion Shinbashi

この道路添いに「壹銭洋食」のお店があった

Tatsumibashi Bridge

ロケ地で有名な巽橋(切り通し)

四条縄手の壹銭洋食店(本店)

現在の「壹銭洋食」の外観は、京都祇園の中でも一際目立つ存在です。外国人観光客の間ではテーマパークのように思っている人もいるようで、「What is that strange store?」と聞かれたことがあります。

お店の方に聞くと、平日の日中は半数ほどが外国人観光客だそうで、英語と中国語のメニューも用意しているそうです。

Store entrance

店内は、昭和時代を思わせる鉄腕アトム、ポチ袋、春画の絵馬などが壁一面に展示してあります。

テーブル席には、旧店舗にも置いてあった、「女給さん」のマネキンが座っているので奇妙な感じです。このマネキンには名前があるようで、「仲間 由紀恵」「黒木 瞳」と書かれた名札を首からぶら下げています。

Showa Era Scenery

Ema

doll

Gift envelope

昔から変わらないお店の名刺

Old-fashioned business cards

これらの名刺は、祇園新橋の白川店の頃にデザインされた「壹銭洋食」の名刺で、今も使われています。懐かしく思ったので、持ち帰って妻に見せると鼻で笑われてしまいました。

それが、色気と遊び心を感じるこの名刺です。

Woman's business card (front)

Woman's business card (back)

一見つまらない「お色気遊び」の名刺ですが、カラオケがない時代の飲み屋は会話が命であったため、このような小道具は色々と使い道があって重宝されていたのです。

そして、この名刺のすごいところは「召しませ昔懐かし壹銭洋食」で食欲をそそり、「御電話壱報 直御焼上」で出前のサービスがあることを知らし、添えられた電話番号に出前の注文といった流れを意図的に作り出すように考えられているところです。

このデザインを考えた方は、マーケティングのプロでしょうか?それとも冗談半分でしたのでしょうか?
そこのところはよく分かりませんが、当時は無駄のない販売促進のための名刺だったことに違いありません。

メインメニューの「壹銭洋食」

この店のメインメニューといっても食べ物は「壹銭洋食」だけで、他にあるのは「抹茶あんみつゼリー」というスイーツと飲み物といったものしか置いていません。

選べるのは、ソースの味を甘くするか辛くするかだけで、ノーマルは、中に辛口ソースを塗り、外に甘口のソースがかかっています。

The exterior of Issenyoshoku

「壹銭洋食」の外観

Contents of issenyoshoku

開いて中身を見ると

昔は、醤油味に七味という味付けがあったのですが、今はソース味だけになっているようです。特別に注文すれば応じて頂けるのかも知れませんが、今回はノーマルのソース味にしました。

「壹銭洋食」ができるまで

「壹銭洋食」には以下の具材が入っています。

menu

このメニューの「all together!」「Only one dish」の意味は分からないでもないのですが、たまご・国産和牛・桜海老・竹輪などが入っているのに「vegetarian ok」とは?と思った次第です。私はベジタリアンではないのでかまわないのですが、この表記が大丈夫なのか気になります。

それはさておき、「壹銭洋食」を作る様子は同店のWebサイトで紹介されていますが、実際にはこのようにして焼いています。

絶妙な火加減で焼いた「壹銭洋食」は、表面がパリパリで中がふっくらです。

Cooking

Finished baking

一見したところ簡単に見えますが、実際に作ってみるとこのように焼き上がりません。先代に焼き方を直接教えてもらった私でも、自宅での成功率は50%くらいなので作るのを断念しています。

For takeaway

これが持ち帰り用の「壹銭洋食」で、今日も家族のお土産に買って帰りました。

一銭洋食の歴史

昭和一桁生まれの父から聞いた話しでは、メリケン粉(現在の小麦粉)を水でシャバシャバにした生地を鉄板で焼き、醤油を塗っただけの「おやつ」だったそうです。

もちろん、具材などは一切入ってないので、メリケン粉で作ったクレープに醤油を塗った食べ物のようだったのでしょう。絶対に美味しくないと思います。

1円支払うと、それを2つか3つに折り曲げて新聞紙に包んで手渡しされていたといいますから、衛生的にも問題があったように思います。

私が子供の頃は、「一銭洋食」または「べた焼」といって、出汁の入っていない小麦粉ベースの生地に具材は「ねぎ」だけというものでしたが、ソースに粉がつお、青のりといったものはあったと記憶しています。

これが進化して「ネギ焼き」になり、後のお好み焼きに発展したのだと思っています。

「千社札(せんじゃふだ)」と花名刺(はなめいし)

余談になりますが、壹銭洋食店にも貼ってある「千社札」と「花名刺」について簡単に解説します。

千社札とは、神社や仏閣に参拝を行った記念として貼る物で、自分の名前や住所を書き込んだお札のことです。

Senzyafuda

千社札

こんなのを見たことがあるでしょう。

花名刺とは、京都の舞妓さんや芸妓さんが持つ名刺の一種で、背景には季節を表した柄や、干支やおもちゃ、道具などの柄が描かれた名刺です。

Hananameishi

京都の舞子さんや芸妓さんと遊ぶと必ずもらえます。

「千社札」と「花名刺」は特別な人が持つものと思っている方が多いのですが、実はだれでも持つことができます。京都ですと「京冨(瀬戸印刷)」というお店で作ってもらうことができます。

また、Amazonならこちらをチェックしてみてください⇒「千社札」または「花名刺」

さいごに

京都祇園の「壹銭洋食」を新橋店舗の時代から現在までを簡単に紹介しました。昔は飲んだ帰りの「シメ」として有名であった「壹銭洋食」ですが、今では国内だけでなく外国観光客にまでも知られる有名店になりました。

私のクライアントの中にも「壹銭洋食」が気に入っている方がいて、出張の最中に新幹線を途中下車して食べにくるそうです。

「壹銭洋食」の所在地

住所:〒605-0073 京都市東山区祇園町北側238

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