明治生まれの祖母の時代から「梅干し」を漬ける習慣があり、母親が作り方を受け継いでいいます。市販の「梅干し」とは違い、使っている材料は「塩」と「赤紫蘇」だけ。完全に無添加の自然食品でありながら10年経っても腐りません。
子供達も生まれた頃から母親が漬けた「梅干し」を食べているので、市販の「梅干し」は食べようとしません。そういう孫をみて母親は使命感をもって、毎年6月~8月は大忙しで「梅干し」を漬けています。
お陰で、今年の「梅干し」↓↓も良い仕上がりになりました。(「天日干し」直後の梅干し)
90歳を超えた母親が孫のためにと「梅干し」を漬けようとしますが、体力に問題があります。10年前までは毎年10kgの梅を付けていたのですが、今は5kgでも厳しい状況です。
母親の体力が落ちてきているので、家族一同が母親の指導の下で作業。お陰で、息子の代までこの製法が受け継ぐことが出来そうです。
昔ながらの「梅干し」の製法
毎年6月に仕入れる梅は、紀州南高梅(木成りの甘粛梅)を和歌山県みなべ市まで見に行きます。
本場みなべ市の梅でも、木成り完熟の梅(梅畑一面にネットを敷いて完熟落下した梅)が目当て、青梅で収穫し追熟したものとはまったく違います。以前、青梅を追熟した梅を使いましたが、梅肉が硬くてとろけるように仕上がりませんでした。
今年の6月に仕入れた梅。
奇麗な梅。良い香りがします。↓↓
梅の掃除
無添加の「梅干し」は菌が少しでも入ればカビが生えます。奇麗に見える梅でも一つづつをよく見ると汚れがあり、特に「梅の実」のくぼみの部分には汚れが溜まりやすい部分です。
最初の作業で大変なのは「梅の掃除」で、まっさらな布巾と爪楊枝に綿棒を使って掃除します。一つづつ丁寧に、くぼみの汚れは爪楊枝と綿棒を使い、全体は真っ白な布巾で拭いていきます。
奇麗に拭けたら、さらに度数の高い焼酎を含ませた布巾で拭き取って壺に入れます。底から一通り並べたら塩を敷き、順番に積み重ねていきます。(使用する壺も梅と同様に奇麗に掃除をして焼酎で消毒します)
重石を乗せて、このまま2~3日漬け込んでおくと水(梅から出てくる液体)が上がってきます。水が上がってくるまではカビやすいので、毎日壺を転がして満遍なく塩が行き渡るようにします。
「赤紫蘇」漬け
6月中旬か末にかけて「赤紫蘇」が市場に出回ります。梅1kgに対して200g程度を目安に「赤紫蘇」を仕入れます。これを壺に漬けた梅の中に漬け込むのですが、またここでひと手間掛かります。
販売している「赤紫蘇」には、鮮度を保つために茎(枝)が付いているので、一枚づつ葉っぱを手で千切り丁寧に水洗いします。
水洗いした水分が残っているとカビが生える原因になるので、水気を奇麗にふき取り半日程度ザル上げして水分をなくします。
大きなすり鉢に「赤紫蘇」を入れて塩を加えてしっかりともみ込んでアクを出します。塩の量は「赤紫蘇」の重量の18%程度を目安に、きつく絞ってボール状にします。一度にぜんぶが出来ないので数個に分けます。
絞って出てきたアクは捨てます。きつく絞った「赤紫蘇」をほぐしながら塩を加えてもみ込みます。またアクが出てくるので絞り込みます。
これを数回繰り返し絞り込んだ「赤紫蘇」が↓↓
このボール状の「赤紫蘇」をほぐしながら、梅を漬け込んでいた壺に入れます。鮮やかな赤い色が一気に壺の中に広がります。
梅全体が梅酢に浸かるように、重石(我が家では、大きめのお皿を置いて、その上に漬物石を置いてます)を乗せて梅雨明けを待ちます。
土用干し
「梅干し」は「3日3晩土用干し」といって、1年で一番暑い日に天日干しするのが習わしです。母親に言わせれば「土用の丑の日」なのですが、あくまでも目安で、梅雨明け後の天気が良い日(太陽が出ている日)に天日干しします。
天気の良い日に3日程干すと、梅干しの表面にシワができて中身がとろけるように仕上がります。
元の壺に戻して保存:色あざやかな仕上がりで、果肉がみずみずしく、酸味が強くなる。
そのまま保存:落ち着いた色目で、果肉はねっとり、酸味は控えめになる。
数回干してそのまま保存:見た目は塩を吹いたような仕上がりで、おやつ代わりに食べるような感じになる。
祖母から息子、4世代に渡って「日本の伝統」を受け継いでいます。出来るだけ分かりやすく説明したつもりですが、詳細な部分では漏れがあるような気がします。そこのところは、完全なレシピがなく母親の感に頼っている部分なので、実際に作業しながらでないと伝えるのは難しいです。
この文化、これからも出来る限り伝えていきたく思っています。
「きず」は子供がお腹を壊したときや、大人でも胃腸の調子が悪い時に薄めて飲むと大変効果があります。
1回の漬け込みで少量しか取れませんが、毎年瓶に取り置きしています。