会社組織もある程度の規模になると、業務の所掌範囲を決める必要があります。そして、所掌範囲を決める方法として「職務分掌」と「業務分掌」があり、文書化したものが「職務分掌規定・業務分掌規程」です。
「職務分掌」と「業務分掌」はよく似た言葉ですが、「職務分掌」はその役職に対する役割まで設定されるのに対して、「業務分掌」は部門ごとなどの区切りで責任・権限を明確化することを指します。
- 「職務分掌」とは、組織において職務ごとの役割・責任を明確に定めることで、代表取締役・役員(取締役)・個人の職務について役割を明確化したものです。
- 「業務分掌」とは、組織において各部門が果たす責任・権限を明確化するために、部門ごとの業務範囲を整理することを指します。
これらの規定を設けることで個人の役割や責任が明確になり命令系統も明確になります。しかし、命令が無ければ動かないといった従業員の主体性まで失われる可能性もあるので注意しなければなりません。
中小企業には業務分掌
規定がない中小企業では「みんなで一丸となってやりましょう」といった掛け声のような指示をよく耳にしますが、役割分担が明確でないために、仕事をする人は何時も特定の個人で、全社員の20%程になっているのです。そして、特定の個人に仕事が集中すると不正が起こるリスクもあります。
「みんなでやりましょう」は誰もやらないのです。
また、役員主導で実施する事業の場合、全員がその事業の周辺に集まってしまい、個人が行うべき本来の仕事が疎かになるケースもあります。
まるで小学校のサッカー大会みたいですね。ボールに全員が集まり、抜かれたらディフェンスもないがら空き状態。
この様な事態を避けるためには業務の所掌範囲を明確にしなければなりません。しかし規定の詳細を過剰にしてしまうと、従業員の主体性が失われるなどのデメリットがあるので、100名程度の中小企業では、部署単位の業務範囲の整理を主とした「業務分掌」の方がメリットが大きいと思われます。
業務分掌の必要性
組織運営にあたり、部門が担う業務を明確に定めておかないと、「この仕事は私の部署ではない」など、部門間で軋轢や混乱が生じるリスクがあります。
また経営戦略上、新規部署を立ち上げる場合などは、部署の立ち上げと同時に「業務分掌」を作成し、その部署が何の業務を行うかを明確にしなければ、新規に部署を作った意味が無くなってしまいます。
業務分掌の作成
「業務分掌」には経営層の具体的なビジョンに則り、内部統制・リスクマネジメントを具体的に盛り込む必要があり、「業務分掌規程」の作成に当たっては、部門の管理職から仕事内容を提出してもらう必要があります。
これは、経営層がその部門に行って欲しい業務もあるため詳細に打合せする為で、従業員の配属などの人事にも影響します。
また、これと同時に部門同士が綿密に打ち合わせ、どの部門でやるべき業務なのかを明確にしなけばなりません。これも経営層も交え業務の抜け落ちが無いようにする必要があります。
- 経営層の具体的なビジョンに則る。
- 部門ごとの仕事内容を把握する。
- 経営層と各部門の管理者で業務の抜け落ちが無いようにチェックする。
- どの部門でやるべき業務なのかを明確にする。
- 業務遂行のため従業員の配属(人事)を検討する。
業務分掌の文書化と周知、運用
「業務分掌」を文書化した「業務分掌規程」は企業の骨格となる規定の一つなので、妥協せずに綿密なすり合わせをしながら行います。また、作成中には各部門で担当者をなる従業員と部門の管理職との打ち合わせも同時進行させます。
この様にして出来上がった「業務分掌規程」は全社員に周知して運用していき、効果を検証します。この検証は定期的に経営層を交え全部門の責任者を交えた会議が有効です。
これもまた一度作ったから完了ではなく「計画(Plan)」「実行(Do)」「評価(Check)」「改善(Action)」を繰り返し育てていきましょう。
巨大な組織になればなるほど、各部門の職務の区分けは複雑化します。このような複雑化するほど「業務分掌規程」は威力を発揮するのですが、従業員の主体性を失わないように目標を明確にした柔軟な規定の作成が求めれます。