会社のお金に関することで、一般の社員が一番身近に感じるのが「利益」ではないでしょうか。
会社の利益は、自分たちの所得に直結するのは言うまでもありませんが、意外にも、会社における利益を知らない会社員が多いのではないでしょうか。
経営者や経理関係職以外の会社員でも、社会人なら「会社のお金」の流れや仕組みを知っておかなくてはなりません。
なぜ「会社の利益の仕組み」を知らなくてはいけないのか?
仕事をすれば、商品を仕入れ顧客に販売するのが基本で、常に支出と収入というお金の流れがあります。初歩的なところでは、顧客への請求書の発行、仕入れ先からの請求の処理、社内での経費の精算やなど、お金の収支を明確にした書類が必要になります。そして、これらの書類は「会社法」や「商法」はもとより業界独自の法令に従わなければならないものがあります。
このように、仕事をすれば必ず「お金」の処理を法令に基づき適正に処理しなければならないのです。
また、会社の経営状態を知り分析するには「損益計算書」などの「計算書類」は必須となるもので、経営の改善などにも用いられます。
知っておきたい利益の種類
利益には、売上総利益、営業利益、経常利益、税引前当期利益、当期利益の種類があります。これらは、「会社法」及び「総務省令」で会社が作成しなければならない計算書類の「損益計算書」に含まれるものなので、日本にある企業なら、どこでも同じ扱いになります。
1.売上総利益
売上総利益は、ビジネスの現場では「粗利」と呼ばれ、自社の主となる商品やサービスによって得た利益のことで、利益を算出する基になるものです。
売上高から売上原価を差し引くことで、売上総利益が算出できます。
売上総利益=売上高-売上原価
売上高
売上高は、会社の本業で得られる収益で「売上」とも呼ばれます。売上高は顧客に引き渡した時点で計上(売掛金)しますが、実際に現金が入ってくる時期とはずれが生じます。
売上原価
売上原価は、商品を仕入れや製造に掛かる費用のことで「原価」とも呼ばれます。売上原価は、当期の売上に対する原価のことで、売れた商品のみが売上原価として計上されます。また、売れ残った商品は「在庫のロス分原価」と「売れ残り商品の評価損」として計上することになります。
2.営業利益
営業利益は、会社の本業で稼ぎ出した利益のことです。
売上総利益から、商品を販売するために欠かせない経費(販売費および一般管理費)を差し引くことで、営業利益が算出できます。
営業利益=売上総利益-販売費および一般管理費
販売費および一般管理費
商品を販売するために直接掛かる費用が販売費、会社全般の業務の管理活動に掛かる費用が一般管理費になります。
商品を宣伝する宣伝費などが販売費で、社員の給与、オフィスの家賃、交際費、電話代などが一般管理費になります。
3.経常利益
会社の本業で得られる営業利益に対して、経常利益は本業以外の利益を含めたものです。株の配当金や保有する不動産からの家賃収入などは、これに含まれます。
本業で得られた営業利益に、本業以外で得た営業外利益を加えることで、経常利益が算出できます。
経常利益=営業利益+営業外利益(営業外収益-営業外費用)
営業外利益
営業外収益は、預貯金や貸付金の利子(受取利息)、債券や株から発生する配当金(有価証券利息)など、本業以外によって得られる「営業外収益」から、本業における営業活動以外において継続的に発生する「営業外費用」を差し引いた利益のことで「営業外損益」とも呼ばれます。
海外との取引の際に発生する、為替による損益は営業外損益に含みますが、何らかのイベントや災害など、臨時的に生じた損益(特別利益・損失に含む)は含みません。
4.税引前当期利益
税引前当期利益は、法人税など、その期に納めるべき税金を支払う前の利益額です。税引前当期利益は、期間中の「特別な取引」(特別利益・特別損失)を考慮に入れます。
本業と本業以外で得た経常利益に特別利益を加え特別損失を差し引くことで、税引前当期利益が算出できます。
税引前当期利益=経常利益+特別利益-特別損失
特別利益
特別利益とは、継続的に発生する利益ではなく、本業とは無関係に一時期だけ臨時的に発生した利益のことです。
不動産などを売却したことによる「固定資産売却益」や、長期保有していた株式や証券の「売却益」などが含まれます。
特別損失
臨時的に発生した損失のことで、不動産の「固定資産売却損」や長期保有している株式の「売却損」、火災や盗難、災害による「損失」などが含まれます。
5.当期利益
当該決算期における、最終的な利益のことを「当期利益」といい、「純利益」とも呼ばれます。
税引前当期利益から、法人税、法人住民税、法人事業税を差し引くことで、当期利益を算出することが出来ます。
当期利益(純利益)=税引前当期利益-法人税等(法人税+法人住民税+法人事業税)
法人税等
会社の利益に応じて課される法人税、法人住民税、法人事業税を合わせて「法人事業税等」といいます。
会社が所有する不動産などの「固定資産税」は、税法上経費として認められている租税なので「租税公課」として「販売費および一般管理費」に含むことになります。
まとめ
「会社の利益」の内訳を知らないのは、給与明細を見ないのと同じで、振り込まれた金額だけを眺めているようなものです。
給与明細を見なくても、会社員でいる限り問題になりませんが、会社で仕事をするうえでは問題があります。
給与明細は会社が仕事として作っていますが、あなたが担当する仕事の明細書はあなたが作らなくてはなりません。
決算書などは、会社の経理部門や外部に委託した税理が作成しますが、その前段階の資料は、担当者の仕事です。
仕事をスムーズに済ませるためには、後を任せる部門や、外部委託する相手の業務内容を大まかに理解しておくことが重要です。
また、深く理解できれば業務の改善や、自身の業績が客観的に評価できるなど、多くのメリットがあります。
経験の浅い人でも、給与の出所や経費の扱い方程度は理解して欲しいところです。